私が働いている会社は一般知名度のない中小企業です。
そのためか、特にここ数年は新卒採用に苦労しています。
毎年、10人以上に内定を出しても、最終的に入社するのは1〜3人という年が続いております。
そんな状況を何とかしようと出ている案が、転勤なしの地域総合職です。
実は当社、転勤なしの地域総合職制度は今もあります。
ただ、地域総合職を選べるのは入社10年以降、もしくは既婚者という条件があります。
今の制度では、新卒採用で入社したばかりの方は地域総合職になれません。
新卒採用に苦労している1つの理由が、「転勤あり」なのではないか?と声が社内でも上がっているようです。
確かに、学生の希望を見ても「転勤不可」としている学生はかなり多いそうです。
それならば、入社条件として「転勤なし」にしたら、もっと学生が入社してくれるのでは?と考えるのも自然な流れかもしれません。
ただ、個人的な考えを言えば、仕事をしていく上で転勤自体は悪いものではない。と思っています。
なので、入社時点での地域総合職は導入すべきではないとも思っています。
採用人数を増やして、まずは頭数を増やすことを優先するか
当社の考え方を理解してくれる人(転勤OK)を採用することを優先するか
簡単に答えが出ることではありませんが、少し私の考えを整理したいみたいなと思います。
転勤の良さとは?
私は実際、転勤を2回経験しています。
最初の勤務地が東京。
入社7年目に名古屋に転勤になり、その4年後にまた東京に転勤になりました。
2回の転勤を経験した結果、私は転勤を経験してよかったと思っています。
同じ営業部でも、同じ商品を扱っていたとしても、地域によって取引先のクセが異なります。
単純に自分の経験値は上がったし、視野も広がったと思っています。
それに加えて、社内の人脈が広がったことも今の業務にプラスになったと思っています。
顔と名前は知っているけれど話もしたことのない人、と同じ事務所で仕事をして何度も言葉を交わしたことがある人。
質問や相談のしやすさが格段に違います。
まだ正式に問い合わせをする段階ではないことも顔見知りであれば、「ちょっと教えてください」と声をかけることができる。
社内で話ができる人が増えれば、仕事がスムーズに進むことも多いと感じています。
社員が何千人もいて、事業所も数えきれないほどあるような大企業とは少し事情は違うかもしれませんが、
仕事をしていく上で転勤が私のキャリアにプラスになったことは間違いありません。
<例外>個人の事情に合わせて勤務地を変更できるかも
レアケースではありますが、転勤できてよかったと思っている点がもう1点あります。
それは個人の事情に合わせて勤務地を変更できる可能性があることです。
我が家は元々別居婚で、私が名古屋、夫が福島に住んでしました。
当社は福島に事業所はないので、結婚が決まって東京への異動希望を出しました。
福島↔︎東京の新幹線通勤はかないませんでしたが、定期異動のタイミングで東京へ異動することができました。
これも転勤前提で会社の人事異動を考えているためだと思います。
転勤がなければ、欠員が出ない限り異動は難しく、タイミングも中々読めなかったと思います。
夫も転勤前提の職種のため、私の育休復帰のタイミングに合わせて、福島から横浜へと転勤の希望が通りました。
我が家が今家族一緒に住めているのは会社の転勤制度のおかげであると言っても過言ではないかもしれません。
(その分、また転勤で家族が別々に住むことになるかもしれませんが…)
転勤できない理由としたくない理由
ここまで転勤の良さを語ってきましたが、実は私は今「地域総合職」です。
数年前にできた制度ですが、制度ができた瞬間に地域総合職になりました。
地域総合職 第1号の1人です。
会社に入ったばかりの頃、独身の頃は転勤OK。住むところはどこでもOK。と思っていましたが、結婚して、子供ができたからは考えが変わりました。
我が家は夫も転勤ありなので、今後もずっと一緒に住み続けられるかはわかりませんが、
私が地域総合職になったことで、家族が別々に住む確率は半減しました。
今の私にとっては、転勤よりも「家族と一緒に住む」ことの方が重要です。
なので、個人的な考えとしては、今の会社の制度が地域総合職を既婚者もしくは入社10年以上に限っているのは理にかなっていると思っています。
転勤が難しい理由で一番大きいのは「家族の存在」だと私は思うからです。
では、なぜ独身の学生たちは転勤を嫌がるのでしょうか。
学生が転勤なしを望む理由とは?
学生や若者が転勤を嫌がる理由は様々あると思います。
住みなれた場所を離れたくない
知り合いが誰もいないところに行くのは不安
田舎暮らしに馴染める気がしない
でも結局、学生が転勤を嫌がる大きな理由は、「1つの会社で働き続けることにこだわっていない」ということかなと思います。
先ほど、転勤のメリットとして私が挙げたのは、今の会社で働き続けていく上でのメリットでしかありません。
経験値を上げたり、視野を広げたりしたければ転職して会社を変えたほうが経験値は上がる可能性が高いですし、社内の人脈もあくまで会社内の話です。
数年働いて、転職しようと思っていたり、起業しようと考えているのであれば転勤にそんなにメリットはないのかなと思います。
働く「場所」にこだわっても、働く「会社」にこだわらない
そういう考え方だと、転勤にメリットは感じられないだろうなと納得してしまいます。
企業と学生の考え方、ギャップは広がるばかり…
転勤にメリットを感じるのはその会社で長く働くということが前提にある気がします。
なので、その会社で長く働くつもりがなければ、生活スタイルを変えてまで転勤をすることにメリットは感じられないでしょう。
最初の話に戻りますが…。
「転勤なし」地域総合職を新卒採用すれば、当社にとってプラスになるのか?
確かに選考を受ける学生は増え、入社する人数も増えるかもしれません。
でも、もしかしたら、その分やめる人数も増えるかもしれません。
(今も決して離職率が低いわけではないですが…)
とはいえ、やってみないとわからない。
入社してみると、意外と居心地がよくて長く働いてくれる人も多いかもしれない。
働いてみて、転勤してもいいかも。と考えが変わる人もいるかもしれない。
おそらく、企業も今までと同じ考え方だと、採用も苦労するし、企業存続自体も危うくなってくる時代なんだと思います。
それでも、全てを学生や若者に寄せたり、今までの考え方を180度変えるのも違うと思います。
これからの時代、企業は守るところ、変化するところのバランスを取らないと生き残っていけないのでしょう。
バランスをとる。
転勤1つとっても、簡単に答えが出ない話ではありますが…。
私個人は結構保守的で昭和な価値観が強めな人間だと思っています。
企業だけでなく個人にとっても、良いところは守りながらも古い考え方に固執しないことが大事なんだとと改めて感じています。